ロボットに関する遵守事項

 人々が生活する空間で、人々と親和性を保ちつつ実験を行うため、ロボット及びその開発者・オペレータには、以下の各項目について遵守が求められる。これらの事項は、自律走行時のみではなく、開発やデータ収集、テスト等のための走行時にも遵守されなければならない。

 

【安全のための事項】

[1] ロボットのサイズ

 ロボットは遊歩道を走行・歩行するのに適した人間のサイズを基本としたサイズとし、進行方向の横幅は 75cm 以内、長さは 120cm 以内とする。重量は最大 100kg 以下とするが、2-3人の人数で持ち運びできるよう 60kg以下を推奨する。 また、高さは最高部を 0.6m 以上、1.5m 以下とする。
(注1)(注2)

 

[2] 動作速度

 走行時の最高速度は 4km/h 以下。(注3)

 

[3] 非常停止スイッチの設置 [NEW]

 オペレータ以外にもそれが非常停止スイッチとわかり操作が可能であること。 非常停止スイッチは、ロボットが誤動作していても、ロボットを安全に停止させられることが求められる。したがって、ソフトウェアを介さないでロボットへの動力供給を断ち停止させるものなどであること。なお、非常停止の後もオペレータの操作により、その場から動作を再開できるよう配慮されていること。 (注4、注5)

 

[4] ロボットの形状と外観 [NEW]

 ロボットは危険な突起部分等を有しない形状であること。また子供の手や足等を巻き込む恐れのない構造であること。高温あるいは感電の恐れのある露出部を有しないこと。

 また、ロボットは、街の中を通行する人(や他のロボット)に見えやすい形と色であること。このため、ロボットは原則として地上高10cm-30cmの幅には、ロボットの平面形状(地面に投影した形状)に沿って外側から5cm以内のところに明6るい色の外面を有していること。その外面にはセンサ等のための隙間はあってよいが、大きな間の隙間は避けること。 (注6)

 

【社会への受け入れと理解を得るための事項】

[5] ロボットナンバーの表示

 ロボットには、それが「つくばチャレンジ」に参加しているロボットであることを明らかとし、ロボットの個体を識別できるよう、規定されたサイズのロボットナンバーを各方向から見える位置に取り付け(または、貼り付ける)こと。(注7)

 

[6] 走行時の無線による操作の禁止

 ロボットを、オペレータの操作により制御する場合、無線通信を用いず有線でロボットに接続すること。(注8)

 

[7] 非常停止の簡単な走行再開指示

 ロボットが非常停止の後に、オペレータが走行の再開を指示する場合、簡単な操作で再開指示が与えられること。(注4参照)

 

[8] その他

 (1) ロボットは動作中騒音や振動を発生しないこと。(注9)
 (2) ロボットは、市街地で働くロボットとして環境への調和を配慮した設計、デザインであること。
 (3) ロボットは環境にやさしい機械としてエコロジーやエネルギー効率に配慮して設計・デザインされていること。

 

【注釈】

(注1)[ロボットのサイズ・重量制限についての安全優先の考え方]
ロボットの大きさに制限を加える理由は、まず安全性を確保し、人々に不安を与える可能性をできる限り排除した上で、人々と共存するロボットの技術へのチャ レンジを行うためである。ここでは、できる限り「世の中の人が恐怖を感じることのないサイズ」から世の中に受け入れられつつ技術を確立 していくことを原則とする。例えば、「これが暴走してきたら恐い」と人々に思わせないサイズ、あるいは、よそ見している人にぶつかっても、大きな被害の発生しない形状とサイズ・重量のボディであることが求められる。それには、1人で動かせる手動の車椅子、幼児用バギー、ショッピングセンターのカートなどのサイズや重量が参考となる。
 高さについては転倒等による被害を避けるため、 飛行又は跳躍する場合も含め最大地上高が1.5mを越えないものとする。
 これらは、既存の電動カート等を流用すると、新規な技術の開発に注力できる分だけ、 より高度な技術開発が出来るという考え方に優先するものである。

 

(注2)一方、いくら軽く小さくても、遊歩道を走っている自転車が接触すれば、自転車側にも被害が生じ得る。もちろん、自転車を走らせる人も十分な注意をするこ とが求められるが、安全のためにはそれなりにロボットの存在が目立つ必要がある。従って、サイズ自体をあまり小さくしすぎることは望ましくなく、それなり の高さを有し、外からロボットの存在と走行がハッキリ見えることが求められる。

 

(注3) 試走や実験時においても、4km/h以上で走行する能力は持たないこと。(プログラムの暴走によっても、それ以上の速度は出ないこと。)

 

(注4)[安全確保のための非常停止操作]
つくばチャレンジはロボットの自主的・自律的な制御を実現することを目的とする。オペレータによる非常停止の操作は、明らかにロボットの自律性を損なうものであり、本走行や記録走行では、原則として、非常停止操作の後ロボットの動作を再開させることはない。
 しかし、オペレータや周りの人間が危険の可能性を感知した場合、非常停止スイッチを押すことへのためらいが発生すると、安全確保に反することが起こりうる。したがって、 つくばチャレンジの運営においては、非常停止させるべき危険が外的要因の場合は、非常停止した後、その危険が解決した後に動作の再開ができることとし、自律走行を達成したか否かの判断は、走行終了後に行うこととする。
 このため、ロボットには、非常停止ボタンにより動作を一旦停止させる機能、および、 一旦停止した位置から走行を再開させる機能を有することが求められる。

 

(注5)[NEW] 非常停止の機能について、実験時に発生する事象に対応して、安全のためにロボットを非常停止させる機能は、極めて重要である。とくに、つくばチャレンジは、開発中の(完成していない)ロボットによる実験であり、また非常停止に求められる条件も、ロボットの重量や走行速度、および走行する環境に大きく依存するため、停止スイッチの設計開発は、他のロボット機能の設計に優先して、しっかりと行われる必要がある。これについては、以下の点に配慮すること。
 ① つくばチャレンジは、一般の人たちがいる中でロボットの走行実験が行われるので、緊急時にはロボットのオペレータ以外の人も、スイッチが操作されることを前提として非常停止スイッチが準備されていること。
 ② 非常停止スイッチの働きは、その時点での環境など、条件に依存しうるので、開発者やオペレータは、その機能の限界を十分に知っていて、説明ができること。

 

(注6)[NEW] つくばチャレンジ2015では、特に雨天の時、走行中のロボットが他のロボットを認識できず、それに衝突する事故が発生しました。
 基本的には、各々のロボットはまわりの物がどのような形状や色であれ、それを認識して衝突等を避けることが求められます。しかし、特に動き回っている他のロボットを十分に認識できない事態は、通行人等へも危険を及ぼす原因になり得るので、走行するロボットは自分の存在が十分にまわりから認識できるものとするように配慮して下さい。
 特につくばチャレンジ2016では、コース上対面して走行する区間が長く、また、横断歩道の手前では前を走行するロボットの後に列を作って待つことが求められており、他のロボットから見て認識を容易とすることが重要です。

 

(注7)ロボットナンバーの表示はサイズを縦11cm×横13cm以上とする。これを前後を含む2~4カ所の地上5cm以上の高さに取り付け(又は貼り付け)ること。各ロボットのナンバーは各年度の受付番号としデザインは事務局が配布する。
 走行に先立つ安全性チェックの際に、この機能も確認します。

 

(注8) [ロボット技術への理解の増進のための配慮]
 ロボットには社会から実力以上の期待を持たれることが多く、操縦で動いていても自律的に働いていると感じる市民が存在する。したがって、つくばチャレンジでは実験時に、ロボットが自律的に動いているかどうかを、周りにいる市民が明確に理解できるようにし、そのような誤解を避けて技術への理解を助けるため配慮する。

 

(注9)ロボットが発する騒音や振動は、通常の屋内や歩道等で一般に許容されている程度までにおさめること。