つくばチャレンジとは
「つくばチャレンジ」は、2007年から継続している、つくば市内の遊歩道等の実環境で移動ロボットに自律走行させる技術チャレンジです。地域と研究者が協力して行う、人間とロボットが共存する社会の実現のための先端的技術への挑戦です。つくばチャレンジは、つくば市内の遊歩道や公園、広場に設定された1km+αのコースでロボットが自律走行できることを課題としています。2007年の第1回目から、このα値も徐々に長くして難易度を上げてきており、2017年開催のつくばチャレンジでは、総計2kmの自律走行や探索対象者の発見を課題に含めています。つくばチャレンジは、具体的なロボットの用途が想起されるような課題設定にはなっていませんが、将来の移動ロボットの実際の利活用のシーンを様々想定し、そのシーンに通底する要素技術が含まれるように課題設定をしています。参加チームがそれぞれのロボットを用意して、これらの要素技術に磨きをかけてゆく研鑽の場、ともいうことができます。
これまでに、大学の研究室や国立研究所、企業などから、延べ600に達するほどのチームが、このつくばチャレンジに参加して、自律移動ロボットの開発と、そのロボットの市街地での走行実験に挑戦しています。実験室の中のみでなく、市民が日常使っている実際の市街地の中に出て、ロボット自身が環境を認識しつつ自らその振る舞い方を決めて走行できる技術が培われてきました。つくばチャレンジは、移動ロボットの自律走行技術の発展に大きな役割を果たしてきたと言えるでしょう。実際、つくばチャレンジに参加しているロボットの技術は年々向上し、この活動は、技術的・学術的にも大いに評価されています。
2013年からのつくばチャレンジ第2ステージでは、ロボットが自律的に走行するのみでなく、指定された区域の中で、ロボット自ら、指定探索対象を発見するチャレンジが加わりました。2015年からはロボットが走行するコースに横断歩道も含めました。第3ステージの初年となる2018年のつくばチャレンジでは、これまでの課題に加えて、ゴールへ到達する経由点の設定が日毎に変化するような課題の設定も含めます。
つくばチャレンジが目指すもの
市民が普段使っているあるがままの環境を「実環境」と呼びます。つくばチャレンジでは、とくにこの実環境で働くロボットの技術の進歩を最大の目的としています。そのため、研究者・技術者が実際のロボットを試作して実地で実験を行い、いろいろな方式を試してその経験と結果を互いに共有することにより、ロボット技術のレベルを向上させることを目指しています。また、現在のロボット技術(とくに自律移動ロボット技術)の状況を一般の市民に見てもらい、技術の現状について正しい理解を得ることがもう一つの目標です。
つくばチャレンジの立場
つくばチャレンジは、自律的な移動ロボットの技術の開発のため、多くの研究・開発グループが集まって行う公開実験です。ここでは、共通の課題を設定し、すべての参加者チームは、その課題の達成を目的としてロボットを開発します。しかし、つくばチャレンジでは、それをコンペや競争とは考えていません。互いに技術を見せ提供し合い、協力しながら、決められた課題を実現するロボットの技術を開発してゆくことを目的とします。この進め方は、市民が日常使っている環境の中で危険を避けて安全に実験を行っていくためには必要不可欠と考えています。
また、実世界で意味のある実験とするためには、普通の「実世界」の中でロボットを働かせる必要があります。したがって、ロボットの走行に際し、例えば観客が多く集まりすぎて環境が普通の状態ではなくなることは避ける必要があります。そこで、つくばチャレンジは日程を定めて行うものの、人に見せるためのイベントとは位置づけません。日常にあるがままの人々がそこにいる環境で実験できることを理想としています。